最初の猫との時は、何もかもわからなかった。
冷たくなること、固くなること、
遺体をどうしたらいいのか?

最初の猫は、妻になついていた。
この猫が死んで、残された人がいつまでも、そこに思いがとどまることをおそれた。
きちんと別れて、また歩み出せることが大事だ。
所詮猫だ。
所詮猫なんだ。

ホームページでいろいろ探して、
火葬して合同の墓に入れてくれるところを見つけた。
オプションはいろいろあるけれど、
お骨も拾わず、骨壺も持って帰らないプランにした。
早くお別れして欲しかった。

あれから、二年。
春の命日にドライブがてら行ったりしてた。
ちょうどいいかんじだ。

最初の猫は、朝に死んだ。
何をしたらいいのかもわからなかったので、
たったか調べて、その日のうちに、すべてを終えた。

今回は、3時半。
もう、いまから何も出来ない。
今夜はお通夜になる。

息子も仕事で夜にならないと帰らない。
ちょうどいい。

死体をなでる。
文字で書くと変態だな。などと考えながら、

それでも、いつまでも、なでている。
長毛種は、背中をなでるのが気持ちいい。
この感覚が、もう味わえなくなる。
そのつらさを、和らげたい。

夜。
弟猫が上の階から降りてきた。
遺体を見ている。
振り返る。
階段を見ている。
何か居るのかと階段を確かめてみるが、なにもない。

猫は遺体をもう一度見る。
不思議そうな顔をする。
振り返り、階段をみる。
目を見張って、不思議そうな顔をする。

臨終の時の、疑問に満ちた目だ。

あっちを見、こっちを見、
なんどかそれを繰り返し、
なにか、納得した風で、
階段の方へ去って行った。

来ているのだろうか?
いや、まだ、いってないのだろうか?


気配がある。

足下をすっと白い影がよぎる。

残された人たちは、欠落を埋めようとする。
その過程の心理状態だと、心理学的には説明できるんだろう。

一晩、妻といろんな話をして、泣いた。
最初の猫のこと、この猫のこと、
いろんな出来事、笑い話。
通夜というのは、心を埋めてくれる。
最初の猫の時も、あせらず、あわてず、通夜をすれば良かった。
13年も一緒に居るものが去ることは、やはり欠落が大きい。
ゆっくりと、心を慣らしてゆく時間が必要だ。
申し訳ないことをした。

わたしたちも、猫を飼うスキルがまたひとつ上がった。

その夜は、みんな猫と一緒に寝た。

朝、
着替えに寝室に行った。
弟猫が居た。
だいじょうぶか?と声を掛け座った。

弟猫は、わたしの左側をじっと、見た。
なんだろうと、見る。
なにもない。
あぐらをかいて座る。
ここにおいで。とあぐらをトントンとたたく。

弟猫は、また、私の左側を見、
何かを追いかけるように
その目線が、すーっと、私のあぐらへと動いた。

居るのか?
居てるのか?
オレの膝の上に、いま、座っているのか?
いつもように座っているのか?
なにも、感じない。
なにも、触れない。

泣いた。

いいなぁ、おまえには見えるのか。
おれには、見えないよ。


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