物語性と大切

2013年2月4日 日常
物語性と大切
複合筆記具を長年愛用していた。
黒・赤・シャープが内蔵されてこれ一本という「新しさ」が好きだった。
仕事を始めた当時はまだまだ新しく、太いモノや機能重視の不細工なものしか無かった。
バーバーリーブランドの一見万年筆のような複合筆記具を見つけたときは3本も買い込んだものだ。

しかし、寄る年波には勝てない。
黒だと思って書き始めると赤だったという事が頻発するようになった。

もう、複雑なものを使いこなす年じゃない。

細いペン先の文字も細すぎると見えにくくなった。

これは、黒しか出ない、これは、赤しか出ない。
どれも、太い字が書ける。
そういうものが欲しくなる。

ここで、「マッキー」に行く人を何人か知っているが、フエルトペンは好きじゃない。かすれ方が好きじゃない。
だとすると、もう、万年筆に行くしかない。

てなことで、万年筆にはまり、お気に入りも何本か見つけ、赤専用も買った。

ところが、絶滅危惧種には絶滅に至るちゃんとした理由がある。
しばらく使わずにいると、ペン先が乾く。
「あ、これメモ!」という時に、使えない。
毎日、日記を付け、手入れし、常に備えるべきなのだろうが、残念ながら私はそういう訓練をしてこなかった。今後もするつもりはない。

気に入らなかった万年筆を全部確かめる。
どれもこれも、書けない。

ただ、唯一、プラチナ万年筆のプレジールだけが書けた。
キャップに工夫がしてあり、1年使わなくても書けると宣伝の商品だ。

その機能だけで買ってみたがメッキがちゃちくて使わなかった。
ま、1000円の万年筆に何を欲張っているのかという問題である。

機能はよい。しかしこの品質は愛せない。
ここでプラチナの高級万年筆に行くべきなのだろうが、ペリカンやモンブランならいざ知らず、プラチナに数万円使う勇気がない。
あ、これなら、と思った「本栖」は即完売である。

ここで発想の転換、安物を使ってみるのも偏屈オヤジらしい。
1本200円の「プレピー」も同じキャップを使っている。
まるでボールペンのようなデザインで万年筆。
カバンに放り込んでおくのに丁度良い。ガシガシ使えるだろう。
「よし、これで行こう!」と決めた。

アマゾンでチェックすると売っている。
しかし、マーケットプレイスでしか出品が無く、200円のものに送料400円はいかがなものか?
近所の文具屋に行ってみた。無かった。
やはり、大きな店に行かないと無いのだろうと重い腰を上げてみた。

紀伊國屋書店に行ってみる、
大量の筆記具コーナー。シャープペン、ボールペン、水性筆記具。
どこに分類されるのだ?200円の万年筆。
万年筆コーナーは別誂え。そっちにはない。
探すと棚の人気のないエンド側に「その他」という風情でビニール袋に入ってぶら下がっていた。
おお、これこれと、見ると、細字の標準タイプ。
0.5と書いた中字が欲しい。
これで我慢するべきなのだが、ちょっと暇になった日曜日、他の店も回ってみる。
梅田ロフト、隣に出来た丸善、ない。
戻って阪急百貨店、阪神百貨店、ない。
折り返して大丸梅田店の東急ハンズ、ここに無ければ帰ろうと思ったら、あった。

たかだか200円の万年筆もこれだけのバックストーリーを抱えると、唯一無二の大切なものに変化してしまった。
気軽にガシガシ使えるのが良いところのはずだったのに。

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