巡礼 (新潮文庫)

2012年5月11日 読書
ゴミ屋敷の住人の一生を描くことで
戦後日本史を総覧する小説。
生活感とスピード感ですっと読めるのは、
文章がうまいということだろう。

しかし、今50代の私以上の年齢でないと、何も感じないだろう。

橋本治は1948年生まれ。
団塊の世代そのものだ。
まるで団塊の世代の履歴書と遺言を読まされたような気分。

切れ味は流石に鋭いのだが、鋭すぎて撲殺力が弱い。
日本刀には、鋭さと共に重さが必要なのだ。

ズバーっと袈裟懸けに斬られて涙したが、
で?と問うと、身体の中に何の種も撒かれていない。

タイトルにもなる第三章「巡礼」が余りに弱すぎるのではないか?
全体のバランスからは、この程度のスピード感でないとバランスが取れないのは確かだが。

私も団塊の尻尾であり、団塊なくしては何もできない世代なので、感銘はする。
しかし、15年ほど遅く生まれただけで、この感想であれば、
若い世代へは、何も残せないだろう。

世代を越えられない。
それが、一人生きる人の限界だと思う。

本人もそう自覚したラストなのかもしれない。


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