クリント・イーストウッドは、もう押しも押されもせぬ大監督ですな。
私は年寄りなので、西部劇俳優の印象が消えないんだけど、これだけ良い作品を作られると、新しい印象の方が強くなって行く。

正直、まとめ借りのDVDから「ヒアアフター」ってディスクを取り出しても、「なんだっけ?」って感じで見始めるわけですが、カットワークや音楽で、「あれ?これ、クリント・イーストウッドだっけ」って思うわけです。それほど同監督らしさは確立されています。

この作品では死後の世界をテーマに選んでいるのですが、その奥にある深いテーマは「理解と不理解」。
積み重ねた経験が特殊であればあるほど、相互理解は難しいものとなるが、理解を確立した時には深い感動と人生への希望が溢れ出します。

残念なのは冒頭の津波シーン。
素晴らしい出来なのだけど、本物の東日本大震災の映像にはかなわない。
建物ごと流されるという想定がないので、嘘くさく感じてしまう。

この映画は、2010年後半の作品で、日本では2011年2月公開。震災の時にも公開中で3月14日に公開中止となった。DVD化も当然遅れ、その結果、私が今頃になってやっと見ているというわけだ。
この映画にとって、冒頭の津波シーンは大前提であり、欠かせないものだし、作品的にも十分すぎるほどの映像を創り出している。全体として地味で深いストーリーを最後まで引っ張ってゆくのも津波の効果であり、商業映画としての成功には不可欠な要素でもある。

それだけに、このタイミングという不幸が残念だ。

「津波だから」という理由で敬遠されるのはあまりに残念だし、死と生を見つめる映画であるだけに、津波に痛みを感じる人にこそ見て欲しいと思うのだが、多分、私のその思い自体も、軽々しい私の「不理解」でしかないのかもしれない。
一つのことを多方面から捉え、いろんな事を考えてしまう。
深い。
良い映画です。




あ、マットデイモンって芝居うまいな。というのを付け加えておく。ただのアクション俳優じゃないな、この人は。
クリント・イーストウッド監督の良いところは、素晴らしい役者やスタッフが集まってくる所だそうだ。人が集まる人柄ってなんだろうね。大事なことだね。

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