0.4秒と0.46秒。(プリウスの回生ブレーキ)
2010年2月15日 日常注意深く追っている。
本当に「不具合でごめんなさい」なのか?
調べてみると、本当にシビアな問題が見えてくる。
ハイブリッドから電気自動車、水素自動車へと、未来の自動車はすべて「モーター」が基本となる。
基本となるテーマは「電気をいかに無駄なく使うか?」である。
そのための重要な技術が「回生ブレーキ」である。
ブレーキを踏む時に、従来の摩擦パッドを使わず、発電機を繋ぐ。
発電した電気をバッテリーに貯め、後で動力として使う。
回生ブレーキは、未来の自動車の根幹となる基礎技術なのだ。
この回生ブレーキは、かなり良く効く。
手回し式発電機を回した事がある人ならわかると思うがかなり重い。
自転車にもダイナモライトが付いている。ライトをパタンと倒すとかなり重くなる。
あれの強力なやつが回生ブレーキである。
当然、回生ブレーキを長く回せば回すほど、たくさん充電でき、燃費も良くなる。
プリウスはホンダのインサイトと燃費競走をしている。
回生ブレーキを一瞬たりとも無駄にしない。多用する。
これが燃費競走の根幹となる。
そこに問題点があったんだろうな。と漠然と思っていた。
しかし、状況を聴くと、もう少し、シビアな内容だ。
今回の問題は「凍結路面でABSが作動した場合」に起こった。
ABSとはアンチロックブレーキシステムの略で、
いわゆる「すべる路面ではポンピングブレーキを活用しましょう」と教えられたやつを自動的に行うシステムだ。
凍結した路面では、ブレーキを踏み続けているとすべり続けてしまう。
ポンポンポンとブレーキを踏んだり離したりした方が効きがよい。
これを応用し、
コンピューターとセンサー技術が、人間には出来ないほど最適なポンピングを行い、
制動距離を最短にいたしましょう。というのがABSである。
このシステムで雪道や雨の石畳などでのスリップ事故が激減した。
だから、現在では「すべる路面でポンピング」は言わなくなった。
「すべる路面では、ぎゅっと踏みしめましょう」と変更されている。
コンピューターに任せた方が、事故が減るのである。
ABSが解ったところで、さて、今回の問題だ。
回生ブレーキは強力な制動力だが、所詮発電機なので、ポンピングが出来ない。
ABSを使えないブレーキなのである。
しかたがないので、
タイヤがすべりはじめたら、まず、回生ブレーキから摩擦ブレーキに変更する、
しかるのちに、摩擦ブレーキがABSを作動させポンピングする。
通常の車より、一工程多い。どうしても動作が遅れる。
こりゃ問題だ。
問題か?
どの程度遅れるんだ?
ってところを見てみると…
ブレーキを踏む→すべりはじめる→ABSが作動する。
この「すべりはじめた」から「ABS作動」までの時間、
通常の車が0.4秒。
プリウスは0.46秒。
その差0.06秒なのだ。
この違いは、空走距離70cmだそうだ。
70cmあれば電柱は倒せる。倒れた人は前輪を通過する。
だがしかし0.06秒
これは、いちゃもんじゃないのか?
当初、トヨタが「フィーリングの問題」と言っていたのもうなずける。
ただ、演出の仕事をしていると、違う見え方もする。
1秒という単位は、非常に重要なテンポなのである。
気持ちいい「間」は1秒、0.5秒というのが基準となる。
0.4秒は、半秒より早い。
すべりはじめた!ぎゃあ!というときに半秒より早く対応されると「早い!」と感じる。
半秒より遅いのは全然ダメだ。
では、0.46秒はどう感じるのだろうか。
やはり、「半秒より早い」ではなく「半秒かかった」になるだろう。
恐怖のまっただ中で人間の感情は研ぎ澄まされる。
このあたりの「フィーリング」はシビアだ。「フィーリング」の問題。ではすまない。
ということで、コンピューターの切り替えタイミングを変更する改修を行ってきたが
メディアが騒ぐので、「不具合でリコール」に変更したというわけだ。
しかし、この0.06秒を「不具合だ」と大問題にするアメリカメディアは、
ハイブリッドカーの基礎技術を持たない3大アメ車メーカーに踊らされているだけじゃないのか?
という疑問は当然ある。
ま、憶測は議論の対象にはならない。無視しよう。
さて、こういう次世代技術の根幹となるトラブルを「当社の不具合です改修します」では、
人類のためにならない。という議論もある。
全人類に開示し、こういう問題があり、どう対処するのかを公開し、共有すべきだ。という議論だ。
今回のクレームはトヨタの技術開発にとっては、また一段と技術を熟成させる最高の機会だったはずだ。ブラックボックスとして社内に温存しておきたい。
それを開示しろと、アメリカ議会は言ってきている。
良く見据えておかなければならない。
アメリカの技術もきちんと開示してくれるんだろうか?
と、そこまで考えていたところ、トヨタの全面広告が出た。
問題は、上記の内容ではなかったようだ。
一瞬すべった後、すぐにすべらなくなった場合の問題らしい。
路面がすべる。
↓
ABSが必要と判断する。
↓
回生ブレーキから摩擦ブレーキに変更。
↓
路面のすべりが収まってしまう。
↓
摩擦ブレーキは、ABSを行わず、通常通り動作する。
このプログラム仕様は、正しい。
誰でも、こうプログラムすると思う。
だが、問題は「摩擦ブレーキより回生ブレーキの方が効きがよい」ということだ。
運転者にとっては、「すべりはじめたとたんに、ブレーキの効きが悪くなった」と感じてしまう。
今回のリコールで、トヨタはどのようにプログラムを改修したんだろうか?
すべりが収まったら回生ブレーキに戻すようにしたのだろうか?
それとも、摩擦ブレーキの押圧を、その時だけ上げたんだろうか?
アメリカ議会の公聴会は、そのブラックボックスを聴きたくてしかたないのだろう。
追記
リコールの内容が分かった。
実は新型プリウスは3つのブレーキを持っていた。
回生ブレーキ、回生ブレーキと同じ効きに強化した摩擦ブレーキ、そして新型に追加された従来ブレーキ。
absからの復帰時、強化摩擦ブレーキを使う事で、効きに問題はなかったのだが、不要な震動が発生する事があり、乗り心地が悪いとユーザーからの指摘があり、新型に追加されたのが通常の摩擦ブレーキだった。
これにより震動は回避されたが、前述の問題が出た。
結局今回のリコールでは、追加された通常ブレーキを使わなくして前の型のプリウスに戻す。という事だそうだ。
なんだか残念なリコールである。
なかなかに深い問題だと思う。
本当に「不具合でごめんなさい」なのか?
調べてみると、本当にシビアな問題が見えてくる。
ハイブリッドから電気自動車、水素自動車へと、未来の自動車はすべて「モーター」が基本となる。
基本となるテーマは「電気をいかに無駄なく使うか?」である。
そのための重要な技術が「回生ブレーキ」である。
ブレーキを踏む時に、従来の摩擦パッドを使わず、発電機を繋ぐ。
発電した電気をバッテリーに貯め、後で動力として使う。
回生ブレーキは、未来の自動車の根幹となる基礎技術なのだ。
この回生ブレーキは、かなり良く効く。
手回し式発電機を回した事がある人ならわかると思うがかなり重い。
自転車にもダイナモライトが付いている。ライトをパタンと倒すとかなり重くなる。
あれの強力なやつが回生ブレーキである。
当然、回生ブレーキを長く回せば回すほど、たくさん充電でき、燃費も良くなる。
プリウスはホンダのインサイトと燃費競走をしている。
回生ブレーキを一瞬たりとも無駄にしない。多用する。
これが燃費競走の根幹となる。
そこに問題点があったんだろうな。と漠然と思っていた。
しかし、状況を聴くと、もう少し、シビアな内容だ。
今回の問題は「凍結路面でABSが作動した場合」に起こった。
ABSとはアンチロックブレーキシステムの略で、
いわゆる「すべる路面ではポンピングブレーキを活用しましょう」と教えられたやつを自動的に行うシステムだ。
凍結した路面では、ブレーキを踏み続けているとすべり続けてしまう。
ポンポンポンとブレーキを踏んだり離したりした方が効きがよい。
これを応用し、
コンピューターとセンサー技術が、人間には出来ないほど最適なポンピングを行い、
制動距離を最短にいたしましょう。というのがABSである。
このシステムで雪道や雨の石畳などでのスリップ事故が激減した。
だから、現在では「すべる路面でポンピング」は言わなくなった。
「すべる路面では、ぎゅっと踏みしめましょう」と変更されている。
コンピューターに任せた方が、事故が減るのである。
ABSが解ったところで、さて、今回の問題だ。
回生ブレーキは強力な制動力だが、所詮発電機なので、ポンピングが出来ない。
ABSを使えないブレーキなのである。
しかたがないので、
タイヤがすべりはじめたら、まず、回生ブレーキから摩擦ブレーキに変更する、
しかるのちに、摩擦ブレーキがABSを作動させポンピングする。
通常の車より、一工程多い。どうしても動作が遅れる。
こりゃ問題だ。
問題か?
どの程度遅れるんだ?
ってところを見てみると…
ブレーキを踏む→すべりはじめる→ABSが作動する。
この「すべりはじめた」から「ABS作動」までの時間、
通常の車が0.4秒。
プリウスは0.46秒。
その差0.06秒なのだ。
この違いは、空走距離70cmだそうだ。
70cmあれば電柱は倒せる。倒れた人は前輪を通過する。
だがしかし0.06秒
これは、いちゃもんじゃないのか?
当初、トヨタが「フィーリングの問題」と言っていたのもうなずける。
ただ、演出の仕事をしていると、違う見え方もする。
1秒という単位は、非常に重要なテンポなのである。
気持ちいい「間」は1秒、0.5秒というのが基準となる。
0.4秒は、半秒より早い。
すべりはじめた!ぎゃあ!というときに半秒より早く対応されると「早い!」と感じる。
半秒より遅いのは全然ダメだ。
では、0.46秒はどう感じるのだろうか。
やはり、「半秒より早い」ではなく「半秒かかった」になるだろう。
恐怖のまっただ中で人間の感情は研ぎ澄まされる。
このあたりの「フィーリング」はシビアだ。「フィーリング」の問題。ではすまない。
ということで、コンピューターの切り替えタイミングを変更する改修を行ってきたが
メディアが騒ぐので、「不具合でリコール」に変更したというわけだ。
しかし、この0.06秒を「不具合だ」と大問題にするアメリカメディアは、
ハイブリッドカーの基礎技術を持たない3大アメ車メーカーに踊らされているだけじゃないのか?
という疑問は当然ある。
ま、憶測は議論の対象にはならない。無視しよう。
さて、こういう次世代技術の根幹となるトラブルを「当社の不具合です改修します」では、
人類のためにならない。という議論もある。
全人類に開示し、こういう問題があり、どう対処するのかを公開し、共有すべきだ。という議論だ。
今回のクレームはトヨタの技術開発にとっては、また一段と技術を熟成させる最高の機会だったはずだ。ブラックボックスとして社内に温存しておきたい。
それを開示しろと、アメリカ議会は言ってきている。
良く見据えておかなければならない。
アメリカの技術もきちんと開示してくれるんだろうか?
と、そこまで考えていたところ、トヨタの全面広告が出た。
問題は、上記の内容ではなかったようだ。
一瞬すべった後、すぐにすべらなくなった場合の問題らしい。
路面がすべる。
↓
ABSが必要と判断する。
↓
回生ブレーキから摩擦ブレーキに変更。
↓
路面のすべりが収まってしまう。
↓
摩擦ブレーキは、ABSを行わず、通常通り動作する。
このプログラム仕様は、正しい。
誰でも、こうプログラムすると思う。
だが、問題は「摩擦ブレーキより回生ブレーキの方が効きがよい」ということだ。
運転者にとっては、「すべりはじめたとたんに、ブレーキの効きが悪くなった」と感じてしまう。
今回のリコールで、トヨタはどのようにプログラムを改修したんだろうか?
すべりが収まったら回生ブレーキに戻すようにしたのだろうか?
それとも、摩擦ブレーキの押圧を、その時だけ上げたんだろうか?
アメリカ議会の公聴会は、そのブラックボックスを聴きたくてしかたないのだろう。
追記
リコールの内容が分かった。
実は新型プリウスは3つのブレーキを持っていた。
回生ブレーキ、回生ブレーキと同じ効きに強化した摩擦ブレーキ、そして新型に追加された従来ブレーキ。
absからの復帰時、強化摩擦ブレーキを使う事で、効きに問題はなかったのだが、不要な震動が発生する事があり、乗り心地が悪いとユーザーからの指摘があり、新型に追加されたのが通常の摩擦ブレーキだった。
これにより震動は回避されたが、前述の問題が出た。
結局今回のリコールでは、追加された通常ブレーキを使わなくして前の型のプリウスに戻す。という事だそうだ。
なんだか残念なリコールである。
なかなかに深い問題だと思う。
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